2021年度 口腔外科講演会 金子教授 【開催されました Q&Aもこちらです】
学術委員会
発信日2022.03.26
更新日2022.04.08
学術講演会 口腔外科 金子教授
「日常臨床で役立つ口腔粘膜病変の鑑別と口腔外科小手術の要点」 |
日時: 令和4年3月13日(日)12:30~ 【開催されました】 講師: 日本大学歯学部 口腔外科学講座 教授 金子 忠良 先生 内容: 日常臨床で遭遇する機会の多い口腔粘膜病変の診断は,口腔を見慣れていてもその鑑別には難渋することが多く,殊に初期癌との鑑別は予後にもかかわりとても重要です。一方,歯科の小手術手技は抜歯,歯周外科やインプラントなどの治療の基本となります。
【Q&A】質問:「クラウンなどの補綴物がない歯肉周辺にみられた色素沈着症様の病変とメラノーマの鑑別で難しい場合がありましたらご教授いただけますでしょうか。」 回答:色素沈着症のうち、口腔粘膜におけるメラニン色素の生理的分布は皮膚に比較すると非常に少ないものです。口腔では歯肉、口唇、口蓋、頬粘膜にメラニンが沈着して、加齢とともに沈着の程度が強まりますが、比較的平坦で淡褐色または濃褐色で境界が明瞭な病変が多いです。アジソン病などの粘膜症状として発現することがあります。 メラニン色素産生細胞が増殖して腫瘤を形成する色素性母斑などでは悪性黒色腫との鑑別が必要です。悪性黒色腫は50歳以降に多く、性差はなく、上顎歯肉と口蓋に多く発生します。黒褐色の腫瘤で増殖が速く、着色が明らかでない無色素性悪性黒色腫もあります。 黒色表皮腫は黒褐色の色素斑と乳頭状増殖を特徴としますが、非常にまれな疾患です。
質問:「コロナ禍での対応として、外科的処置を行う時に、特に気を付けなければいけない点や、その際の器具の処理等をご教授下さい。」 回答:外科的処置をする際は歯科治療時とほぼ同様ですが、観血的処置または歯の切削の際には唾液や血液を含んだ飛沫、エアロゾルが発生します。そのため、術者ならびに介助者は感染のリスクがあります。したがって、感染予防対策には十分に注意をしなければなりません。 「手洗い」と「手指消毒」を徹底し、マスク、メガネ、フェイスシールド、帽子、ガウン等といった個人防護具(PPE)を使用します。タービンを使用する際は、エアロゾル発生感染防御技術・装置として口腔外バキューム装置等を導入します。周囲への拡散防止のため、できる限り個室を使用して室内の空気が汚染されないように十分な換気を行います。 器具の処理に関しては、新型コロナウイルスに対しても一般的な滅菌方法に従い処理します。使用した器具や器材類は洗浄、滅菌します。耐熱性のない器具類は消毒処理を行い、器具は出来るだけディスポーザブル製品を使用します。また、診療ユニットは患者毎に清拭、消毒等を徹底する必要があります。
質問:「病変が疑われる患者さんをご紹介するための記載内容について、宜しければご教示の程お願い申し上げます。」 回答:医師・歯科医師が他の医師・歯科医師または病院・診療所などに患者を紹介する場合に発行する書類は診療情報提供書です。 患者を紹介する際の診療情報提供書で重要なことは簡潔な文章で、事実を正確に記載することです。また、有病者の歯科治療における紹介状では、先方に依頼の目的が十分に理解できるよう、具体的な記載が必要です。一般的な記載事項は下記の通りです。 ①紹介先医療機関名と担当医名 ②記入者名 ③患者氏名・性別・年齢 ④診断名 ⑤紹介目的←精査依頼、加療依頼など。 ⑥既往歴 ⑦家族歴 ⑧症状経過←所見を正確に記載する。 ⑨治療経過、検査結果、処方内容などを記載する。 診療情報提供書の記載時における注意事項は依頼事項を正確に、客観的に記載することです。
金子 忠良 先生 小幡 純 同窓会会長 |